痰一斗 糸瓜の水も 間にあわず
をとゝひの へちまの水も 取らざりき
大愚糸瓜に自分自身を象徴させた子規は,明治三十五年(1902)九月十九日享年三十六歳,十七夜の月明その生涯を閉じた。
十八日の夜は,子規庵に虚子が泊まった。寝る気がしないので庭に降りて見ると「其は十二時頃であったろう。糸瓜の棚の上あたりに明るい月が掛かっていた。」(子規居士と余)
子規は,よく眠っていた。虚子も座敷の床に戻ってうとうとする間もなく「清さん」と母堂に起こされた。もう子規の呼吸はなかった。
其時であった。さっきよりももっと晴れ渡った明るい旧暦十七夜の月が大空のまんなかに在った。